「神になった子どもたち」 ~上島「白山神社」霜月祭~

掲載: 12 09 2009

dsc_002212月5日(土)南信濃上島地区の「白山神社」で、霜月祭が行われました。
国指定重要無形民俗文化財「遠山の霜月祭」は、鎌倉時代から続くとされ、日本国中の神々をお呼びすることから宮崎駿監督が「千と千尋の神隠し」を制作する際に参考にされたといわれています。
生きとし生けるものすべての生命力が弱まるこの時期に行われ、山深い遠山郷で生活する人々と密着した祭りです。昨年度から浜井場小学校は、5学年時に遠山郷にこだわった体験活動を進めています。この学習で子どもたちが得たものはとても多く、さらに保護者の皆さんも子どもたちから影響を受けているそうです。
さて、6学年では、遠山郷に見せられた子どもたちを再び霜月祭に参加させたいとの保護者の願いから、保護者主催で霜月祭に参加することになりました。4月から地元との打ち合わせを行い、1泊2日・日帰りの2コースを設定。できる限り多くの方の参加ができるように工夫しました。
参加する霜月祭は、昨年の学習で笛や太鼓を教えていただいた松下さんと近藤さんの地元である上島地区「白山神社」です。松下さんは、奥さんと一緒に山にいって竹を切り、子どもたちに笛を手作りしてくれた方であり、笛のお師匠さんでもあります。

午後1時、浜井場小学校の6年生とその保護者は、いろりの宿「島畑」と南信濃自治振興センターのマイクロバス2台に乗って遠山郷へ向けて出発しました。
午後2時30分頃上島に到着。上島地区集会所に荷物を置いて早速神社へ向かいます。
地区の皆さんは、子どもたちを笑顔で迎えてくださいました。そして、上島地区の皆さんをはじめ多くの方から差し入れをいただきました。
dsc_0021神社の中に入った子どもたちは、松下さんに作っていただいた笛を取り出し、早速地元の方と一緒に笛を吹き始めます。
その笛は、保護者が作ったであろう笛袋に入っていました。手作りの心のこもった笛を2年間大切にしている姿に心が震えます。
その姿を見た県外の方が、
dsc_0031「これだけ子どもがいればこの祭は、安泰ですね」
と地元の方に話をされました。
「こんなに子どもがいたら合併などしなくてもよかったよ。この子たちは、みんな市内の小学校から手伝いに来てくれたんだ。ありがたいよ」
と地元の方がぽつりと言いました。地域の課題を再認識させられた一言でした。

dsc_0032さて子どもたちは、上島の子どもになって笛を吹いています。その笛の音の中で笛の師匠が、神事を行い、舞を舞います。
「上島の神社にこんなに大きな笛の音が響くのは、何十年ぶりだろうか」
と地区の方が目を細めながらつぶやいていました。

 
dsc_0037「笛早いよ。もっとゆっくり吹いて」
「今度は、早く吹いて」
子どもたちは、もうお客様ではありません。地元の方から次から次に指示が飛びます。祭りが進に連れて、指示の口調も厳しくなります。しかし、子どもたちは懸命に吹き続けます。

 「今は何をしているところですか?」
今まで笛を吹いていた子どもが尋ねます。
「やっていることの意味が知りたい」
「今度、美博(飯田市美術博物館)に行ってみよう。霜月祭を研究している人がいるから詳しく聞いてみたら」「うん、浜井場から近いしね」
学校の学習ではないのに学ぼうという姿勢が現れてきました。

午後5時頃から午後6時30分まで、上島地区集会所で夕食の時間です。持ってきたお弁当を早々と食べた子どもたちは、休む間もなく笛の練習をしています。
「バラバラで練習していても・・・。みんなでやろう」
と保護者が提案すると、全員での練習が始まりました。
「夜もがんばれよ」
と声をかけると、にっこり笑って頷いていました。
面(おもて)が出てくる夜には、地元の方以外に多くの見学者が尋ねてきます。あまりの人の多さに、子どもたちの体を心配しましたが、人に揉みくちゃにされながらも笛を吹き声をかけ続けます。

面が出ると祭は、最高潮に達します。とその時、地元の方が、上座で「浜井場小学校・・・・」と呼んでいます。どうしたことか、子どもたちからひときわ大きな歓声があがっています。
何事でしょうか。
心配する大人たちの目に飛び込んできたのは、神になった子どもの姿です。
そう、地元の方が、子どもに面を被せてくれたのでした。「しゃく(笏)」を持ったちょっと小さな神様が、通り過ぎています。子どもたちの歓声と笛の音は、さらに大きくなります。写真を撮ろうとしても、人が多すぎてシャッターが切れません。
「○○さんのお父さんだ!」
続いて保護者の方も面を被って登場しました。浜井場小の子どもが、上島の子どもになった瞬間でした。

午後11時過ぎ、最後まで残っている神様をお送りします。最後まで祭りを見つめる子どもたちの目には何が映っているのでしょうか。子どもたちには、霜月祭が古来から伝えてきた「生きる力」が、宿ったのではないかと思いました。
最高の舞台に上がることができた子どもたち。それを支えた保護者。そして何より、数百年の歴史を誇る霜月祭に、他地区の子どもたちを受け入れてくださった上島地区の皆さんの心。子どもたちは、大きな何かを感じ取ってくれたと思います。

dsc_0039次の日、宿泊した「島畑」の皆さんに、お礼の意味を込めてみんなで歌を歌いました。子どもたちが自ら歌をその場で選び、仲間が指揮をして歌いました。
保護者の皆さんは、「(小学校を卒業しても)この子たちをできる限り、霜月祭に連れてきたい。上島の皆さんと一緒に祭りを盛り上げたい」といっていました。

dsc_0043この子どもたちは今、何を感じているのでしょうか。子どもたちは、2年間にわたった遠山地区の皆さんとの交流を通じて、誰かに必ず支えてもらって生きていることを実感したとともに、ふるさとを想う心が深く刻み込まれたことでしょう。
これこそ、飯田も持つ力「地育力」そのものと感じた2日間でした。
「千と千尋の神隠し」では、「千尋」の成長する姿が描かれています。もしかすると子どもたちは、「千尋」と同じ経験をしたのかもしれません。

余談ですが、担当者は、「合併後ずっと遠山に関わっているが、面を被らせてもらったことは一度もない」と苦笑してました。

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