朝まで降り続いた雨も上がり、鼎の切石にある「科野(しなの)草木染工房」で草木染めの親子体験講座が開かれました。講師は、工房の稲垣昭吾さんご夫妻。この日、弟子入りしたのは7組の親子17人です。
工房を見学させていただいた後、草木染めのやり方について稲垣さんからの説明を聞きました。今日の体験は、「藍」と「茜」の染め液を使って白色の布を染めることです。染め方は、「絞り法」です。稲垣さんは今までに作られた草木染めの作品を示しながら、絞りのやり方を説明していきます。「この模様を作るには、この布の端を輪ゴムで巻きます。巻いた部分は、染料が染みこまなくて白っぽい模様になります。また、割り箸で布の両側を挟み輪ゴムを巻くと、挟まれた部分は白くなります」 輪ゴムの使い方、割り箸の使い方によって、いろいろな模様ができるのです。輪ゴムで布を巻くと円形の模様に、箸などで押さえると線形の模様ができます。
さて、一人一人に白い布が用意されました。ハンカチサイズの大きさです。輪ゴムと箸を使いながら、一人一人が絞りを考えていきます。最初は、お父さんやお母さんに相談しながらやっていましたが、絞りの方法を理解すると、それぞれが自分で絞りを工夫し始めます。一番人気のあった絞りは、割り箸を十文字に組み合わせる「手裏剣型」。箸が布から浮かないように輪ゴムをきつく巻きます。これが大変な作業です。輪ゴムだけで絞りを考えた友達もいましたし、輪ゴムと割り箸を組み合わせて、絞りを考えていた友達もいました。一人一人違った絞りの方法ができたようです。さて、どんな模様になるのでしょうか。
次は、いよいよ染料を使って染める作業。最初は「茜」です。茜の根から採れた染料を水の入った鍋に入れて温めます。染料をよく溶かすためには、常に水をかき回わさなくてはなりません。一人一人が交代でかき回していきます。染料がどのように変化していくかを、みんなで真剣に見守ります。次第に水が温められ、染料が広がっていきます。そして、85℃になったところで白い布を入れました。しばらくは、お湯の中に漬けておきます。
茜染めは、漬けておくのに多少時間がかかるので、今度は藍染めに挑戦です。こちらは、既に出来上がっている染め液の中に白い布を入れます。液の中に入れること約5分。藍色に染まってきたところで液から出します。そして、巻いてあった輪ゴムや割り箸を外し布を広げます。さて、いよいよ楽しみの瞬間です。どんな模様ができているのでしょうか。
「わっ、面白い形。こんな形になるんだ」
「四角い模様がたくさんできた」
「竹みたいな模様になった」
と、感動の声が上がります。稲垣さんからも
「立派、立派、いい模様ができた。その模様の作り方をおじさんに教えてもらたいな」
と、お褒めの言葉が。周りで見ていたお父さんやお母さんも、
「楽しそうな模様ができたね」「きれいな色に染まったね」
と嬉しそう。 布を広げ着色するのを待ちます。そして、軽く水洗いをしてから乾かします。
稲垣さんの家の前の道路脇に、乾かす場所があります。一人一人が染めた布を順番に干していきます。雲の隙間から、温かな陽が差しています。
そのうちに茜染めも、布に色がついてきました。藍染めと同じように、鍋から布を取り出し輪ゴムや割り箸を外し布を広げます。また、歓声が上がります。薄い茜色に染め上がっています。茜で染めた布の色は、おだやかで自然を感じさせるやさしい色あいです。藍で染めた布と同じように、水洗いをして干していきます。そして、道路脇に全員の作品が並びました。まるで草木染めのギャラリーのようです。天然染料で染めた色は移ろいやすいけれど、移ろう色を眺めるのも風情の一つです。
温かな日差しを浴び秋風に揺れながら、「藍」と「茜」が生地にしっとりと馴染んで落ち着いた雰囲気を醸し出してくれています。植物や樹木の命が布に吹き込まれ、私たちに温もりを感じさせてくれます。
古代から伝わる草木染め。昔の人と同じ天然染料を使い同じ方法での染め方に、古代へのロマンを感じた親子も多かったのではないかと思います。



